フー・ファイターズのデビューアルバムにゲスト参加していたから知ったのか、シアトルの名門レーベルにして、グランジを世界に広めたSUB POPからアルバムを出している、という理由でCDを買ったのが先だったかは覚えていないが、僕にとってTHE AFGHAN WHIGS(アフガン・ウィッグス)というバンドとのファーストコンタクトはそんな曖昧なものだった。
そのフー・ファイターズのアルバムに参加しているのが、バンドの中心人物のグレッグ・ドゥリ(Vo&Gt)。バンドの頭脳と呼んで差し支えないほど、彼の手による曲がほとんどを占めます。その音楽性の特徴は、R&Bやソウルといった黒人音楽に影響を受けていると言われていますが、正直その手の音楽に詳しくないので、どの辺が影響を受けているのかは分かりません。独特なリズム感のロックだなと思う程度ですね。だからあまり気にせずにいても問題ないです。
彼らの作品で最も有名で、セールス的にも成功したのはメジャーデビューアルバム『Gentleman』でしょう。90年代ロックをよく聞いていた人なら、アルバムジャケットに見覚えがあるかもしれませんね。
ただし、今回僕が紹介するのはメジャー2作目の『Black Love』というアルバムです。このアルバムも名作『Gentleman』に劣らず良い作品なんですよ。個人的には『Black Love』の方が音の広がりが多彩な感じがして好きなんです。
クセが強い歌声。これがアリはナシかでこのバンドの評価は別れる。
この「My Enemy」という曲を聴いただけでは、黒人音楽の影響云々なんて関係なさそうじゃないですか。パンキッシュなハードロックナンバーといった感じで、イントロの硬質なギターリフなんて、結構日本でも人気が出そうな気もしますけどね。
ただ、このバンドのもうひとつの特徴がグレッグのヴォーカルにあります。どうですか?かなりクセのある、ねちっこいというか暑苦しいというか、独特な歌い方してますよね。本国アメリカではどうだか分かりませんが、ヴォーカルが違う人物だったら、このバンドはもっと売れて知名度も上がったんじゃないかと思うんですよね。とは言え、これがこのバンドの味でもあるのですが。
この「Going To Town」なんかがソウルなどの影響を受けている楽曲というんでしょうか。ギターのカッティングなんかもちょっとファンキーな感じがして、ミクスチャー・ロック的な雰囲気もあります。
ああ、でも、この曲を聴いているとグレッグのヴォーカルもすんなりと耳に入ってきますね。そのくどさが逆にアクセントになっているのかも。
このアルバムで最も聴くべき曲が、「Bulletproof」じゃないでしょうか。6分半あるちょっと長めの曲なんですけど、イントロのオルガンと終盤のピアノがの狂乱っぷりがなんともカッコいいんです。加えて、終盤のグレッグのシャウトは彼の声の好き嫌い関係なく、非常にエモーショナルで素晴らしいです。
アルバム全体を通して、ギャリッとしたギターサウンドがカッコよく、普通にギターバンドとしての魅力も沢山あります。R&Bがどうとか、ヴォーカルの声のクセが強いとか書きましたが、オルタナ全盛の90年代でも日本ではあまり知られていなかったバンドですので、当時聞き逃していた人も、彼らを始めて知った人もぜひ一度お試しを。