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音楽紹介

ニューメタルのパイオニア KORN『Korn』

90年代に発表されたアルバムのなかで、その後のロックの歴史を変えたアルバムが3枚あります。ひとつはニルヴァーナの『Nevermind』。ひとつはレディオヘッドの『OK Computer』。そしてもうひとつがKORN(コーン)『Korn』です。

『Nevermind』は、それまでアンダーグラウンドシーンの音楽だったグランジ/オルタナティブ・ロックをメインストリームの位置まで持っていったという功績が大きいですね。この作品の前にも、同じオルタナ系のバンドがメジャーレーベルからアルバムを発表していましたが、世界へのインパクトに関しては『Nevermind』以上のものはなかったでしょう。

『OK Computer』に関しては、ロックとデジタルを掛け合わせた音楽を王道に位置付けたことですかね。ロックとデジタルを合わせると、どうしてもテクノだったりダンスのエッセンスが多分に含まれるケースが多かったのですが、この作品はあくまでロックバンドが作ったロックアルバムでした。そしてそんな実験的ともいえるアルバムが世界的にヒットしたため、もはや “デジタル処理を施したロックサウンド” が世の中の音楽シーンに氾濫することになりました。

ダーク&ヘヴィーに留まらない、新感覚のヘヴィーミュージック

94年に発表されたコーンのデビューアルバム『Korn』は、当時のロックシーンでは圧倒的に暗くて、重苦しい作品でした。僕がこのアルバムを買ったのも、音楽雑誌のレビューで「とにかく暗い」といったことが書かれていたのが気になったからです。

で、聴いてみました。当時の感想は「メチャメチャ暗い」でした。

当時ここまで陰鬱でヘヴィーなロックってほとんどなかったと思います。一部のヘヴィーメタルやハードコアにも暗くて攻撃的なバンドも多くいましたが、コーンは徹底的にダーク&ヘヴィーを追求していた感があります。またジョナサン・デイヴィス(Vo)のヴォーカルスタイルも独特で、低く唸るようなシャウトだったり、ラップではないけれども早口でまくし立てたり、でもサビなんかでは美しいメロディラインを歌っていたりします。当時としてはオルタナティブやミクスチャーという風にしか表現できませんでしたが、今になってみると、その後のニューメタル/ラップメタルの先駆けでしたね。

アルバム冒頭を飾る「Blind」にこのバンドの全てのエッセンスが含まれていると言っても過言ではないですね。イントロからすでに漂うこの暗さ。さらにジョナサンのヴォーカルが加わると、自分が “全く新しい音楽” に出会ったことに気づかされました。ハードロックでもメタルでもグランジでもない。四半世紀以上経った今となってはメインストリームのロックですが、当時は非常に斬新でした。

「Ball Tongue」、「Need To」、「Clown」ではリズム隊のフィールディ(Ba)とデイヴィッド・シルヴェリア(Dr)の変態的なプレイを聴くことができます。弾くというよりは常に弦を叩きつけるようなフィールディの演奏と、やたらと手数の多いデイヴィッドのドラミングは、従来のヘヴィーロックバンドにはなかったコンビネーションでした。特にフィールディはヒップホップがかなり好きということで、その辺のアプローチも今までのロックにはなかったものかと思います。

それまでのヘヴィーメタルなどと違って、基本的にギターソロがない曲がほとんどですが、ヘヴィーなギターリフでグイグイ押す曲も彼らの持ち味です。もちろん、そこにジョナサンの自分を全てさらけ出すかのような直情的なヴォーカルが乗っかることで、このバンドの異常さが完成すると言えます。「Divine」や「Faget」という曲の後半では、歌うというよりもまるで呪詛の言葉を叫んでいるかのようです。

特に彼の感情が爆発というよりも暴発するのが「Daddy」という曲です。最後はもう泣きながら歌っています。ライブでも辛すぎて歌えないというほどの内容ということで、音楽活動に自分の全てを捧げた人間と言えます。

ジョナサンはバグパイプも演奏するのですが、このアルバムで唯一その演奏が聴ける曲が「Shoots & Ladders」です。こんなに重苦しい曲が多いアルバムですが、バグパイプの音が鳴っているイントロ部分だけは、違うバンドの曲を聴いているような穏やかさです。まあ、その後は平常運転ですが。

彼らの後に、リンプ・ビズキットやリンキン・パークといったニューメタル勢のバンドが多く現れ、それ以外にもヘヴィーでラウドな音を鳴らすバンドはたくさんいます。今となっては、このアルバムが特別重苦しくは聴こえないかもしれませんが、ラウドロックの世界では記念碑的なアルバムだと思います。駄目な人は全然受け付けないかもしれませんが、ハードロックやヘヴィーメタルとはまた違った魅力があるのも事実です。少しでも興味が湧いたら、ぜひ聴いてほしいバンドです。

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