若さゆえの衝動をガツンと感じられるロックが好きだ。
分かりやすい例だと、パンクロックなんかですね。演奏技術云々よりも、大きな音を鳴らして自らの主張を歌う、叫ぶ。社会の何かを変えたいという熱意を感じる曲もあれば、ただ単に自分の言いたいことをわかってほしいだけの曲もある。どういった内容の歌でも、若いうちにしか表現できない歌や音を見出すことができると、いい歳になっても聴き入ってしまいます。
もちろん、そういった音楽はパンクの専売特許というわけではなく、おじさん連中が聴くクラシックロックだって、何十年も前には当時の若者が熱狂したエネルギーの溢れるアツいロックだったんですからね。今ではすっかりお上品に聴こえるビートルズだって、当時は大人たちが眉をひそめるような音楽だったわけだし、フォークロックですら反体制的な若者たちに支持された危険な音楽でした。
ただ、社会に反抗しろだとか、大人たちに噛みつけと言いたいわけではなく、極端な話、歌う内容なんてどうだっていいと思っています。青春時代の若者特有の情熱や感傷をしっかりと感じ取ることさえ出来れば。
だからベテランのロックミュージシャンは大変だ。もう若くないのに、若さが魅力であるロックをやり続けないといけないのだから。まあ、年をとっても「ロック」し続ける元気な人たちもいますけれど。
ロックとはやはり若者の音楽なんだなあと思わせるアルバム
なんの拍子で初めて聴いたのかは忘れましたが、CATFISH AND THE BOTTLEMEN(キャットフィッシュ・アンド・ザ・ボトルメン)という長ったらしい名前のバンドを知りました。多分、YouTubeのオススメ動画にでも出てきたのではないかと思います。
PVの内容は全くもってどうでもいいんですが、この「Fallout」を始めて聴いた時に、彼らが産み出す青臭いセンチメンタルなメロディーにやられてしまいました。ただ感傷的になるのではなく、ポジティブさも感じ取れるメロディーラインも好きです。またソロパート以外でもリードギターがメロディアスな演奏で、タイプは違えど、U2やスウェードのようなギターが好きな人は好きになれるんじゃないでしょうか?
もちろんこの「Fallout」が収録された、彼らのデビューアルバム『Balcony』には他にも若さが持つ瑞々しさを備えた曲が多く取り揃えられています。例えばアルバム1曲目の「Homesick」。一聴すると儚げで弱々しいヴォーカルとギターフレーズで始まります。しかしタイトな演奏のドラムとベースに、空間を流れるようなフレーズのギターが加わるサビのパートには、若者特有の哀愁がこれでもかと詰まっています。さらに短いながらギターソロがカッコいい!
個人的にお気に入りの曲は「Cocoon」ですね。映画のようなMVも見ごたえがありますが、やはり曲が良いのは間違いないです。何と言ってもバン・マッキャン(Vo&Gt)の声質が、この曲が持つ雰囲気に完璧に合っています。不安定ながらも芯があるというか、彼のヴォーカルがこのバンドの世界観を決定づけていると思います。
このアルバム発表後にギタリストのビリー・ビビーが脱退しており、その影響かどうかは分かりませんが、2ndアルバムはあまり僕には響かなかったんですよね。
ただ、今作には今回紹介した以外にももっと若さゆえの曲があふれているので、是非聴いてもらいたいです。それこそ、今では歳のいった元若者の人たちにも。