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読書感想

トリックも大事。でも小説はやっぱり登場人物の魅力が大事 『ブルーローズは眠らない』市川憂人

作者のデビュー作の『ジェリーフィッシュは凍らない』にドはまりしてしまい、続編となる今作『ブルーローズは眠らない』をほぼ一気読みしてしまいました。続編と言っても、主人公を含めた数人の登場人物と時間軸が同じなだけで、前作を読んでいなくても全く影響はないです。コロナウイルスの影響で、仕事は休業。自宅待機となった身としては自由な時間がふんだんにあるので、しばらくは読書三昧の生活になりそうです。

主人公は前作同様、フラッグスタッフ署の刑事、マリア・ソールズベリーと部下の九条漣のふたり。不可能と言われていた青いバラを同時期に生み出すことに成功した、テニエル博士とクリーブランド牧師を捜査することになります。ですが、この捜査はフェニックス署のバロウズ刑事からの依頼によるもので、マリアたちは捜査の真意がわからないままふたりに接触します。博士と牧師、ふたりに共通するものは青バラの生みの親という点。マリアたちは青バラが何かしらの鍵を握っていることは薄々と勘づいていました。

そして殺人事件が起こります。舞台は密室です。

ミステリーとしての面白さ以外も

この物語はふたつのパートから構成されています。マリアたちが青バラに関わる「ブルーローズ」パートと、エリックという少年の視点から描かれる「プロトタイプ」パートです。両親からの虐待に耐えかねて家を飛び出したエリックは、山奥で行き倒れたところを遺伝子研究を行うテニエル一家に救われます。そのまま博士の助手として家族と一緒に生活を始めるのですが…。

前作『ジェリーフィッシュ~』もふたつのパートがメインで物語が進み、最終的にそれぞれのパートの伏線を回収してひとつの結論に導かれました。今作も同様に、それぞれのパートを読み進めていくと色々と違和感を覚える点が現れるのですが、最後に集約されるところがミステリーの醍醐味ですね。あと、マリアと漣の漫才のような掛け合いが今作でも健在で、このシリーズの楽しみのひとつです。

ミステリー小説ですから、トリックやアリバイはもちろん重要なのですが、青バラを生み出すための遺伝子工学の解説がかなり本格的で、こういった部分を読むだけでも面白いですね。特に僕は完全な文系人間なので、こういった話は純粋に楽しめます。

トリック、アリバイ、動機。これらについてはどんなミステリーでも万人が納得するものはないんじゃないですかね。僕は十分に楽しめましたし、犯人の正体も意外でした。まあ、もうミステリーをミステリーとして読むのは疲れるので、あまりその辺は個人的にそこまで追求していません。登場人物が魅力的なだけでも楽しめる小説ですよ。

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