おんどくライフ
音楽、読書、日常いろいろ
読書感想

こういう密室トリックもあるのか『ジェリーフィッシュは凍らない』市川憂人

久しぶりに「推理小説」を読んだ。殺人事件が起きて、探偵役が捜査を進め、犯人に辿り着き、解答が始まる。『ジェリーフィッシュは凍らない』は”ザ・推理小説”と呼ぶべき本でした。

マニアと比べると、そんなに推理小説を読む方ではないのですが、広告や書店で面白いと絶賛されている本はどうしてもミステリーや推理小説が多い。結果、そういったミステリー系の小説のタイトルが脳内にインプットされてしまい、書店を訪れた際に、「なんでもいいから面白い本が読みたい!」という購買意欲が湧いた時にはそれらの本を手に取りがちになってしまう。

もちろん、そういったジャンル以外にも評判のいい読み物はたくさんあるんでしょうけども。つまりは己の好みの幅が狭いだけなのを露呈してしまっているわけですが…。

簡単なあらすじは、テスト飛行中の小型飛行船ジェリーフィッシュの中で、乗員が次々と変死を遂げます。後日不時着したジェリーフィッシュから複数の他殺体が発見され、マリア・ソールズベリー警部と九条漣刑事が事件を捜査するというものです。

物語は基本的に3つのパートに分かれています。テスト飛行中の飛行船内部の「ジェリーフィッシュ」、事件後のマリアたち捜査陣目線による「地上」、犯人の独白による「インタールード」です。これらの章が入れ替わりながら物語が進むのですが、章が変わるごとに別の章との矛盾や違和感が生まれます。読み進めていくうちに「ああ、そういうことか」と気づかされるのですが、話の組み立て方が秀逸ですね。小さな謎が解明されていくたびに生まれる爽快感は、推理小説ならではの醍醐味と言えます。

帯には『そして誰もいなくなった』と『十角館の殺人』の名前が載っており、なるほどこの二つの小説に通ずるものがありました。どの辺が、というとネタバレになりそうなので、具体的には言えませんが…。

いわゆる密室殺人事件を扱った小説は数ありますが、狭い飛行船内部という難易度の高い密室殺人を題材にしつつ、大胆なトリックが仕掛けられており、謎の全てが明かされる「エピローグ」は非常に楽しめました。

また、登場人物のマリアと九条のコンビの漫才のようなやりとりも面白く、事件を追うシリアスな展開だけでなく、ユーモアのあるシーンもこの小説の魅力ですね。本書以外にも彼女たちが登場する作品があるそうなので、ぜひそちらも読んでみたいと思います。

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)