90年代からロックを聴き始めた人間からすると、アメリカのハードロックバンドと言うと、どうしてもド派手で煌びやかなパフォーマンスをするバンドの印象が強い。エアロスミス、ガンズ・アンド・ローゼス、モトリー・クルーやヴァン・ヘイレン等々。当然70年代のハードロックなんてほとんど聴いたことがなかったし、レジェンド的なバンドもベスト盤や有名曲だけ抑えていた感じで、そういったバンドはもっと後になってからちゃんと聴いたケースが多数。
なので10代の頃に70年代の要素が強めのバンドを聴いても、”ハードロック”というイメージよりも、「なんだか古臭いロックだな」といった感想の方が強く、あまりその手のバンドに惹かれなかった自分がいました。今にして思えば、ただの食わず嫌い(聴かず嫌い?)でしかなかったわけですが。
しかし90年代半以降、愛するグランジ・ロックが終焉を迎え、メロコアやラップ・メタルがロックの王道に躍り出ると、もっと違うテイストのロックを聴きたくなってきました。
インディー界ではもっと多種多様な音楽があったのでしょうが、なかなか日本に住んでいて海外のインディー・ロックを色々と聴き漁る機会はなかったので、昔のバンドに目を向けるようになります。レッド・ツェッペリンやブラック・サバス、イーグルスといったバンドはヒット曲しか知らなかったのですが、そういったバンドに手を出すようになりました。そうすると、「意外と聴ける」ことが分かり、いわゆる大御所バンド/ミュージシャンを聴くようになっていきます。
以前、ブラインド・メロンをこのブログで取り上げましたが、このバンドもリアルタイムではそんなに熱心に聴いてなかったんですけど、いろんなロックを知るうちに好きになっていったバンドのひとつです。
そしてTHE BLACK CROWES(ザ・ブラック・クロウズ)も後々、個人的評価が上がったバンドです。
アメリカ人って当たり前にこういうバンドが好きなのか?
多分、ブラック・クロウズというバンドを語ったり紹介するときは、大体彼らの2ndアルバム『The Southern Harmony And Musical Companion』が挙がるでしょう。まあ、どう考えても彼らの代表作だし、実際名曲が多いアルバムなので。
僕がブラック・クロウズを始めて聴いたのは3rdアルバムの『Amorica』(アモリカ)というアルバムだったのですが、これが彼らの魅力に気づくのに遠回りした原因でもあります。『The Southern Harmony And Musical Companion』は非常にキャッチーで良い曲が詰まったアルバムなので、彼らの音楽の特徴であるブルースやサザン・ロックに傾倒していなくても、楽しめる作品になっています。やはり『Amorica』を最初に聴いてはいけませんでした。
どうですか、このキャッチーさ!もう歌詞の内容とかはどうでも良くて、聴いた奴らをノリノリにさせることしか考えていないんじゃないですかね?ブラック・クロウズのカッコよさはツインギターにありますが、なかなかに手数の多いキーボードも聴きごたえ十分と言えます。終わりそうに思わせておいて、最後の最後にイントロのフレーズをもう一回演るのがいいですねえ。
彼らの曲の特徴として、”サザン・ロック” がキーワードのひとつだと思いますが、僕はあまりピンと来ないんですよね。そもそも前述したように、70年代などのクラシックなロックをあまり聴いてこなかったため、サザン・ロックのバンドもほとんど知りませんから。
ただ、サザン・ロックとか知らなくても全く問題ないほど彼らのロックは楽しめます。そもそも90年代以降のバンドをジャンル分けしようとしても、それぞれのバンドは色々な要素を自分たちの音楽に取り入れているので、多少の知識の不足がロックを楽しめない足かせになることもないですしね。
この「Sting Me」がアルバムの1曲目で、 さっきの「Remedy」が2曲目になるのですが、この2曲を続けて聴くだけでブラック・クロウズというバンドの魅力が伝わると思います。バンドの中核を担う、ロビンソン兄弟の兄クリス・ロビンソン(Vo)の歌声のなんとまあセクシーなこと。掠れ気味の声で高音メロディを歌う様は、まるでやさぐれたロッド・スチュワートみたいじゃないですか。もちろん誉め言葉ですよ!
そしてブラック・クロウズの良さはノリノリでアップテンポなナンバーだけでなく、ミドルやスロウテンポの楽曲にもあります。人によっては彼らの真骨頂はバラードにありと考える人も多いと思います。
ブルージーなスロー・バラード「Bad Luck Blue Eyes Goodbye」。何も派手なことはしていないのですが、なんでこんなに名曲なのか。むしろ何もしていないからなのか?ブルースとかよくわかんねえし、といった方でもきっと気に入る1曲です。
アメリカ全土で、グランジ/オルタナ旋風が吹き荒れていた1992年に全米1位に輝いたこのアルバムですが、これだけ渋い内容のアルバムで1位はすごいです。どの時代でも、流行とは関係なく評価される作品ってありますねえ。