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音楽紹介

ハードでメロウ、そして何よりポップなロック。THIRD EYE BLIND『Third Eye Blind』

90年代のオルタナティブロックバンドと言えば、ニルヴァーナやパールジャムのように、世の中に対する怒りや若者の苦悩を楽曲を通して訴えかけるバンドが多くいました。そういったバンドの楽曲は、扱うテーマがテーマなので激しく暗いものが目立ちます。

コーンやリンプビズキットといった、90年代後半を代表するラウドロックもやはり攻撃性の高い音楽です。まあ彼らの場合はオルタナティブロックというより、ニューメタルなどとも呼ばれていたので、それはそれでジャンルが違うのかもしれませんが。

一方でウィーザーやジェリーフィッシュといった明るいメロディーとポップな曲調をメインとする、いわゆるギターポップも目立ちました。今となっては(特に日本では)、こういったポップなロックを鳴らすバンドの方が市民権を得た感じがします。

もちろんそれぞれのバンドが暗い曲ばかり、ポップな曲ばかりを演奏していたわけではありませんが、それぞれ得意な楽曲というのはあったでしょう。

97年発売のサード・アイ・ブラインドの『Third Eye Blind』はポップな中にエッジの利いたギターが印象的です。ギターをメインとしたロックなんですが、底抜けに明るいギターポップというわけでなく、かと言って激しくラウドな曲というわけでもありません。

バンドの中心人物のスティーヴン・ジェンキンス(Vo&Gt)の歌声がどんなタイプの曲とも相性が良いのかなと思います。澄んだ歌声でメロウな曲を歌ったかと思えば、ハードな曲でも絶妙なシャウトをかましてきます。また各曲のメロディーが非常に美しいものばかりで、激しめの曲でもキャッチーなものが多いです。特に1曲目の「Losing A Whole Year」は陰りのあるメロウなアルペジオから始まり、ストレートに自分の思いをぶつけるようなスティーブンのヴォーカルがたまらない一曲です。硬質でエッジの利いたケヴィン・キャドガン(Gt)のギターの音が、アルバム全体を通してただ単にハードな音だけを鳴らすバンドではないことを物語っています。

ハード、ポップ、メロウなんでもありのセンスの塊

続く2曲目の「Narcolepsy」はメロウな出だしと甘いヴォーカルから始まり、先ほどの「Losing A Whole Year」とは打って変わった曲調ですが、途中からギター、ベース、ドラムが激しくなり、アップテンポなバリバリのロックソングへと変貌します。それでもヴォーカルは柔らかい歌声のままで静と動のバランスが取れた曲です。

「Semi-Charmed Life」は聴いたことがある人も多いでしょう。当時、ラジオでもよくかかっていました。彼らのポップセンスが爆発した楽曲で、イントロの”トゥッ、トゥッ、トゥッ~”のコーラスを聴いただけで名曲確定ですね。主にラップ調のヴォーカルなので、なかなかメロディーを覚えて口ずさむのは難しいかもしれませんが、サビはシンプルでキャッチーです。

短いイントロの後、サビから始まる「Graduate」はアルバムの中でもっともアップテンポでノリノリな1曲です。この曲でもそうなんですが、ほとんどすべての曲でケヴィンのギターソロがヴォーカルに負けず劣らずメロディアスでキャッチーなものが多いんです。またアライオン・サラザー(Ba)とブラッド・ハーグリーヴス(Dr)のリズム隊が生み出すグルーブも彼らの魅力です。決して派手な演奏をするわけではありませんが、ツボを押さえた二人のプレイがあるからこそヴォーカルとギターのメロディーが活きてきます。

「Jumper」、「How’s It Going To Be」はメロウな曲調のナンバーです。それでも完全にバラードというわけではなく、パワーバラードとでもいうか、曲の終盤にはスティーブンの力強い歌声が聴けます。特に「How’s It Going To Be」はサビのコーラスワークも完璧な仕上がりです。

「London」はアップテンポでポップなメロディーが軽快なナンバー。ラップ調のヴォーカルがより軽やかな雰囲気を作り出しています。自然と体でリズムを取ってしまいます。いかにも90年代のポップロックといった曲です。

静かに始まる「The Background」は悲しげなヴォーカルが胸を打つバラード。スティーブンが最後まで静かに歌い上げる展開は他の曲とは少し違います。『Collective Soul』のの記事でも書きましたが、やはり長く聴けるバンドは良いメロディーを書くソングライターがいますね。激しさをウリにするバンド(それこそメタルとか)でも、長く人気があるバンドはメロディーがしっかりしてますからね。

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「Motorcycle Drive By」も落ち着いたギターのアルペジオから始まる曲ですが、中盤から演奏がラウドになりスティーブンのヴォーカルもエモーショナルなものに変わります。昔はそんなに好きな曲ではなかったのですが、今は好きですね。好みが変わったのではなく、いろいろな曲の良さに気づけるようになったんでしょうね。

収録曲が14曲もあるため全ての曲の紹介はできませんが、全体的にメロディーセンスに優れた曲ばかりです。同じ90年代にデビューしたパワーポップバンドのウィーザーも、そのメロディーやポップセンスで20年以上経った現在でも人気ですが、少なくともこのアルバムに関してはサード・アイ・ブラインドも負けていないくらいのクオリティだと思っています。特に1曲目から6曲目の流れは完璧です。一時停止することなく聴いていられますね。

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