おんどくライフ
音楽、読書、日常いろいろ
音楽紹介

ハードロックからの脱却。PEARL JAM 『Vitalogy』

1991年に『Ten』でデビューしてから30年近く経った今もなお現役で活動しているだけでなく、十分なセールスを記録するモンスターバンド、パールジャム。長いキャリアの間に10枚のスタジオアルバムを発表。オフィシャル・ブートレッグを含めるとおびただしい数のライブアルバムを作っており、なかなかアルバムを発表しないとか、ライブ音源が発売されないようなミュージシャンに比べると、非常にファン思いのバンドと言えます。

しかし、熱心なパールジャムファンの方には申し訳ないですがこれだけは言えます。

「パールジャムのアルバムは最初の3枚を聴いてれば十分」

デビューアルバムの『Ten』、2枚目の『Vs.』、そして3枚目の『Vitalogy』。はっきり言って、パールジャムの音楽はこの『Vitalogy』の時点で完成されていると思うので、あとのアルバムを聴いても特別な驚きは生まれません。バンドの音やVoのエディ・ヴェダーの歌声に惚れ込んだ人が以降の作品を聴けばいいでしょう。まあ、それはどのミュージシャンのファンでも同じことでしょうが。

その後の作品にも名曲はあります。例えば4枚目の『No Code』に収録されている「Off He Goes」という曲は、パールジャム屈指の名バラードだと思ってますし(何なら一番好きな曲かも)、5枚目『Yield』の最後の「All Those Yesterdays」という曲も哀愁漂う名曲です。でもアルバム全体通して聴きごたえがあるのは、やっぱり最初の3枚までかなという気がします。

バンドの方向性を決定づけた3rdアルバム

特に僕が一番好きな『Vitalogy』はパールジャムの音楽性を決定づけたアルバムだと思います。いま聴くと、前2作は音やリフも結構ハードロックからの影響が強く感じられ、まだ彼ら独自のサウンドを確立していない印象です。それでも当時は彼らを初め様々なグランジ/オルタナバンドを知るたびに真新しさを感じていましたが。

94年発売の『Vitalogy』は今までのハードロック的な曲ではなく、パンク寄りと言うとこれまた言いすぎな気がしますが、まあいわゆるオルタナ的なサウンドに変化しました。特にリフやギターソロがわかりやすいくらいにシンプルになりました。と言っても楽曲が地味でおとなしくなったわけではなく、1、2曲目の「Last Exit」と「Spin The Black Circle」といったノリノリな曲から始まります。

続く「Not For You」、「Tremor Christ」、「Nothingman」は若干スピードを落とした曲です。エディヴェダーのヴォーカルとシャウトをじっくりと堪能できますよ。特に「Nothingman」はアコースティック風で、それこそ「おとなしい」曲なんですが、エディの歌声が胸にグッとくるものがあります。日本語の歌詞カードでは「何もない男」と訳されていましたが、当時何も誇れるものがない自分に重ねてみたりしたせいですね。

「Whipping」は疾走感のあるパンキッシュなギターリフが特徴的です。なんだかんだこういうシンプルな曲が一番聴きやすいかもしれません。

「Corduroy」はこのアルバムのクライマックスと呼べる曲です。LIVE動画もたくさん見かけますから、パールジャムファンの中でもかなり人気があるんじゃないですかね。曲の展開が非常にドラマチックで、中盤から後半の盛り上がりが格好いいですよ。1枚目の『Ten』の中に「Jeremy」や「Black」といったこれもドラマチックな展開の曲がありますが、この2曲のような仰々しい感じではない気がします。とは言えLIVE動画を見ると、マイク・マクレディの長めのギターソロがあったりと派手な演出にはなっていますが。


「Satan’s Bed」はいくつかの実験的な曲を除いて、このアルバムの中で一番ヘンテコな曲です。タテノリでアップテンポですし、サビのコーラスもわかりやすいんですけど、あまりパールジャムらしくない気がします。ちょっとユーモラスな曲ですね。でもアルバムを買った当初は一番好きな曲でした。パールジャム特有のシリアスさがない分、すんなり耳に入ったのかもしれません。

そしてこのアルバムで僕が最も好きな曲「Better Man」です。「Corduroy」と同じくこの曲もやはり『Vitalogy』以降の楽曲と言いますか、ハードロック要素の薄い、新生パールジャムを代表する1曲です。エディ・ヴェダーの何かと闘っているような叫びではなく、力強いけれども温かみのある歌声が、年をとった今だからこそ僕の心に響くのかもしれません。


「Immortality」は非常に男の哀愁を感じさせるスローテンポの名曲です。本人たちは否定していますが、当時はカート・コバーンの自殺後に発売されたアルバムだったので、歌詞の内容から彼の死に関連しているのではないかと言われたりしていましたね。正直、歌詞の内容は全く意味不明なのですが、なんか嫌なことがあったり落ち込んだりしたときに聴いてみるといいですよ。もっとダークな気分にさせてくれますから。

パールジャムはグランジだけでなく、90年代の音楽界を語る上で外すことのできない重要なバンドです。エディ・ヴェダーのような歌い方をするシンガーもすごく増えたと思います。当時はフォロワー扱いでしたが、その後のポストグランジやヘヴィロック勢のヴォーカルの基本的なスタイルになったのではないでしょうか。

今年の3月に11枚目のアルバムが発表されるということなので、それも楽しみです。最初の3枚だけ聴けばいいと書きましたが、なんだかんだ僕はスタジオアルバムは全て所持していますよ。やっぱり好きなバンドですからね。

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)