おんどくライフ
音楽、読書、日常いろいろ
音楽紹介

寡黙な轟音ギタリスト。DINOSAUR Jr『Without A Sound』

前回の記事でグランジバンドの魅力はヴォーカルのシャウトにあり、といったことを書いたんですけど、DINOSAUR Jr(ダイナソージュニア)に関してはこの限りではありません。

Vo&GtのJ・マスシスの気だるげな、言ってしまえばやる気のないような歌い方はロック好きな若者の心に響くようなエモーショナルなものではないと思われます。

僕が初めて購入した彼らのアルバムは、94年発売の『Without A Sound』。

1曲目に収録された「Feel The Pain」のMVを観たときに、ギターがノイジーな割にPOPな曲調だなと思ったのと、街中でゴルフをするというシュールな内容で心に引っかかていた曲とバンドでした。

例えばCDのライナーノーツって、そのバンドに関連するいろいろなアーティストの名前が挙がっていますよね。それでどんどんバンドを覚えて、CDを買い集めていきました。今だとYOUTUBEのオススメに出てきたMVやライブ動画から新たなバンドを見つけるといった感じですかね。当時ってそうやって音楽の幅を徐々に広げていったんですけど、オルタナ系のバンドのライナーでダイナソーJrの名前もよく見かけたので、これは間違いないバンドなんだろうと思って買った気がします。

でも若いころの僕はニルヴァーナやパールジャムのような、心を揺さぶられる情熱的なヴォーカルのバンドが好きだったので、当初このアルバムはそこまで聴き込まなかった気がします。

ただ、このバンドはギターの表現力が半端ないです。大体どの曲でもJ・マスシスのギターがめちゃめちゃ鳴きまくってます。実際には長い曲ではないのに、ギターソロなんかいつまで続くんだっていうくらい弾きまくってますし、粘り気のある、鼓膜に絡みつくようなサウンドは轟音でノイジーなんだけど、メロディアスなフレーズなのでやかましさは感じません。逆に主張しすぎないJのヴォーカルが、ギターを際立たせているのかもしれません。実際、このバンドの楽曲ってヴォーカルのメロディよりもギターフレーズの方が耳に残ります。

年を重ねていろんな曲を聴くようになってからは、ヴォーカルメロディがキャッチーだったり、わかりやすいギターリフのある曲だけでなく、地味で派手さはないけども良いなと思う曲が増えてきました。一部のバンドやアーティストではありますが、古臭いと思っていた70年代や80年代のアーティストも普通にカッコいいと思えてきました。そうするとダイナソーJrが魅力的に見えるようになりました。「ギターが鳴く」ということが少しわかったような気がします。Jのヴォーカル自体は特別好きということはないですけど、これもひとつの味ですね。

不思議なPOPセンスのある楽曲たち

その「 Feel The Pain」は、やや歪んだ音なのに、なんだか可愛らしいフレーズのアルペジオと、その後に流れるタテノリ必至な性急なギターフレーズのギャップが妙にしっくり来る曲です。そしてラストに流れるギターソロこそがこのバンドの真骨頂!唐突に終わる展開もナイスです。

その後に続く「I D’ont Think So」と「Yeah Right」もPOPでキャッチーなギターフレーズが全編に渡りながら、途中やラストにJのギターソロが爆発!といった展開です。いわゆるギターポップほどナヨナヨしていないし、テクニックにばかりこだわるようなギターロックでもない。まさにグランジ界のギターヒーロー。

アコースティック風の「Outta Hand」を挟んでから始まる「Grab It」は、イントロからボルテージMAXのギターソロでスタート。でも途中のギターフレーズや、キャッチーなヴォーカルと女性コーラスのおかげか、案外聞きやすい一曲です。

後半はゆっくりめのテンポの曲が続きます。軽快な曲が続いた前半部分と比べると少しおとなしい印象ですが、その分J・マスシスのギターをじっくりと聴かせる楽曲が集中しています。「Even You」や「Get Out Of This」のギターソロは聴きごたえがありますよ。

最終曲「Over Your Shoulder」は男の哀愁を感じさせる、枯れた味わいのディストーションギターが炸裂しています。Jの気だるげなヴォーカルがこの曲の物悲しさをより際立たせています。歌詞も自分の許を去っていった女性のことについて書かれており、ダイナソーJr屈指の名バラードです。

ダイナソーJrはこの『Without A Sound』の前年に、『Where You Been』というアルバムを発表しています。このアルバムも非常に良い作品で、好きな曲もたくさん収録されていますが、今回はこの 「Over Your Shoulder」 を紹介したかったので、『Where You Been』についてはまたの機会に書きたいと思います。

僕はいわゆるスーパーギタリストの作品をほとんど聴いたことがないので、J・マスシスのギタープレイのレベルがどの程度なのかはよく分かっていません。そういった音楽が好きな人の評価は知りませんが、彼は90年代オルタナシーンを代表するギタリストの一人だと思ってます。今も活動しているバンドですので、ぜひほかのアルバムも含めて聴いてみてください。

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)