90年代オルタナティブロックを代表するバンドTHE SMASHING PUMPKINS(スマッシング・パンプキンズ、通称スマパン)は、何回もメンバーの脱退、復帰を重ねながら今も活動を続けるベテランバンドです。
バンドの中心人物はビリー・コーガン(Vo&Gt)。ほぼ独裁とも言えるほど、このバンドは彼の管理下にあります。作詞作曲はもちろんですが、編曲もほぼ彼が一人で行っています。さらにアルバムによっては、ギターとベースのパートをほぼ自分ひとりで演奏することもあったみたいです。これには他のメンバーもたまったもんじゃないですね。自分たちは用なしだといわれているようなもんですから。
結局、そういった人間関係の問題もあって、2000年に一度バンドは解散してしまいます。まあ、その後一部のメンバーとの和解もあって再結成はしますけど。
轟音ギターとメロウなメロディを共存・融合させた彼らの曲調は、シアトル発信の90年代グランジ/オルタナティブ・ロックのブームにピタリと当てはまり大人気となります(スマパンはシカゴで結成)。そんな彼らが他のオルタナバンドと一線を画した点は、ビリー・コーガンの独特なヴォーカルにあります。
どことなく機械的で、何かしら加工を施したかのようなシャウトはかなり好き嫌いが分かれるんじゃないですかね。僕も最初は彼の声が苦手でしたね。まあ何度も聴いていると、そのクセの強い声が心地よく感じるのだから不思議なものです。
スマパンの代表作といえば、93年発表の『Siamese Dream』か、95年発表の『Mellon Collie And The Infinite Sadness(邦題:メロンコリーそして終わりのない悲しみ)』のどちらかが挙げられることが多く、僕としても異論はないです(ちなみに僕はMellon Collie~派)。メロウ&ノイジー。バリエーション豊かな楽曲が揃っているこの2枚のアルバムを聴けば、スマパンはほぼ攻略したようなもんです。
ただ今回はその2枚の後に発表された4作目『Adore』(98年発表)を紹介したいと思います。
案外、このアルバムが一番好きって人は多いのかも
この『Adore』は、先に挙げた2枚のアルバムと比べるとゆったりとした落ち着いた曲が多く、ギターもノイジーではないので、はっきり言って派手さはないアルバムです。
元々スマパンはノイジーで激しい曲とは別に、メロディアスで聴き心地のいい曲も多数作っていたのですが、さすがに『Adore』のように全曲後者のような曲で占められたアルバムを作るとは、当時はファンでさえも予想してなかったでしょう。
日本ではまだ売れたみたいですけど、本国アメリカでは商業的に厳しかったみたいですね。正直、僕も発売当時はピンと来ませんでした。やっぱりスマパンにはギターバンドらしい激しいアルバムを求めていましたから。
でも改めて聴くと、スマパンらしい良曲が多いんですよね。
淡々とした展開の「Perfect」。いま聴くとビリー・コーガンの歌声が沁みますねえ。今作では、前作までのドラマーだったジミー・チェンバレンがドラッグ問題で解雇されているので不参加。そのせいかドラムが打ち込み風の味気ないサウンドですが、それがまたこういった曲風に似合っています。
「Perfect」とは曲調が若干異なりますが、「Daphne Descends」と「Tear」も深い味わいのある曲です。どちらも暗く、悲壮感のあるメロディですが、夜に部屋で一人で聴くにはもってこいの曲です。
ほとんどすべての収録曲が地味で暗いものばかりですが、そこがこのアルバムのいいところかもしれません。ドライブ中に聴くとか、みんなで集まっているときにかけるような曲はないかもしれませんが、静かな夜にヘッドホンで聴いてみるのがオススメのアルバムです。
最近、auのCMでスマパンの曲が流れていました。『Adore』の収録曲ではありませんが、こちらもおとなしめの静かな曲でした。激しい曲よりも、そういったテイストの曲の方が今では支持されているんですかね。
それでは最後はこの派手さのないアルバムの中でも一、二を争うくらい地味な曲でお別れです。