2020年にもなった現在はどうか知りませんが、1990年代の日本における洋楽ロックバンドの代表格のひとつは、間違いなくAEROSMITH(エアロスミス)だったと思ってます。
元々が70年代デビューの大ベテランバンド。メンバーの脱退(その後復帰)やドラッグ騒動で人気に陰りが見えるも、80年代以降はオリジナルメンバーでの再活動が決定。RUN-D.M.Cがカバーした「Walk This Way」の再ヒットなどにより人気バンドへと返り咲きます。
なので90年代に入る前から日本でも十分な知名度はあったと思いますが、93年発表のアルバム『Get A Grip』は彼らの存在をもっと幅広い層に知らしめたんではないでしょうか。特に今作は日本に限らず、世界各国で売れに売れまくったアルバムでした。
もちろん収録された楽曲が優れている点は当然なのですが、これほどまでに世界各地で成功した要因のひとつはミュージックビデオにあると見ています。
捨て曲なし、PVも外れなしの傑作アルバム
「Cryin’」、「Crazy」、「Amazing」のPVで演技をしたアリシア・シルヴァーストーンという女優が実にチャーミングで魅力的でした。彼女主演のこのPV3部作は、当時多くの若者(特に男子!)の心をがっつりと掴みました。
この曲の何がカッコいいかって、ジョー・ペリー(Gt)のギターソロから終盤にかけての盛り上がりが最高すぎます。途中で演奏がストップして、スティーブン・タイラー(Vo)のシャウトだけになるところとか、その後のハーモニカもしびれるくらいのカッコよさです。そして終盤にもジョーのギターソロが炸裂。最強のロックバラードですね。PVの内容も、ちょっとしたショートフィルムみたいで見ごたえがあります。
「Crazy」はブルースを基調とする彼らならではのブルージーなバラード。先の「Cryin’」よりもっと哀愁漂うナンバーですね。また、最初のサビのスティーブンの “Honey!” のシャウトの仕方が、とてもじゃないけど真似できないカッコよさ!「ハニー」じゃなくて、「ハネィェ~!」なんですよ。伝わるかなあ。ロードムービー風のPVも、いかにもアメリカって感じで憧れたもんです。
とまあ、いきなりバラードを2曲ご紹介しましたが、このアルバムの醍醐味はむしろハードなロックチューンにあります。特にアルバムの前半にはそういったナンバーがずらっと並んでいるので、ノンストップで聴き続けちゃいます。代表的な曲が「Eat The Rich」ですね。
メチャメチャ盛り上がる曲ですね~。メンバー全員のパフォーマンスもカッコよすぎます。ジョーのダンディさ。ブラッド・ウィットフォード(Gt)の渋さ。トム・ハミルトン(Ba)の熱さ。ジョーイ・クレイマー(Dr)のクールさ。そしてスティーブンのカリスマ性。いやあ~、エアロスミスの魅力がばっちり詰まった名曲です。ベースとドラムがカッコいい曲なんで、そこにもぜひ注目して聴いてください。
この他にも「Get A Grip」、「Fever」、「Fresh」などもノリノリのロックナンバーです。また「Line Up」はレニー・クラヴィッツとの共作ですが、トランペットなどのホーンセクションが参加していて、ゴージャスなサウンドが展開されてます。ちなみにジョーのギターソロの前に、レニーが “Come on Joe” とシャウトするのですが、わざわざアディショナルミュージシャンの項目に、”Come on Joe” とクレジットされているのが洒落が利いています。
アリシア・シルヴァーストーン嬢が出演する最後のPVの曲、「Amazing」は歴代のエアロスミスの楽曲の中でもトップクラスの名曲だと、個人的には思っています。特に後半のジョーのギターが炸裂する怒涛の展開は圧巻の一言です。PVの内容も現在でいうVRをモチーフにしたもので、いま観るとチャチさは隠せませんが、当時はとても未来的に感じたものです。
いやあ~、久しぶりに聴きましたけど、やっぱりいいアルバムでした。曲がいいのはもちろんですが、音そのものが重厚ながらも煌びやかで、ハードロックアルバムとしても歴史に名を遺す名盤ですね。プロデューサーのブルース・フェアバーンはやはりいい仕事しますね~。