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音楽紹介

古臭さが逆に新しい。BLIND MELON『Blind Melon』

ブラインドメロンのデビューアルバム『Blind Melon』は92年に発売されました。その頃、僕はまだロックや洋楽にそれほど興味を持っていなかったので、リアルタイムでバンドの存在は知らず、このアルバムは次作の『Soup』と同じような時期に聴いた気がします。

大学の友達に勧められたのですが、その時にガンズ・アンド・ローゼズの「Don’t Cry」にVoのシャノン・フーンが参加していると教えてもらいました。当時、僕はそれほどオルタナ系のバンドをあまり知らず、ガンズやエアロスミス、ボンジョヴィといった「洋楽ロックに興味を持った若者が大体最初に聴くバンド」くらいしか知識がありませんでした。

ガンズのアクセル・ローズのお気に入りだし、90年代にデビューしたバンドということで、ハードロック色の強いオルタナ/グランジ系の曲を演っているのかなと思いました。

その思い込みはCDを再生してすぐに消え去ります。

新しいのか古臭いのかよくわからないロック

派手なアメリカンハードロックでも、激情に駆られたパンクロックでもなかったその曲調は僕にとって全く馴染みのないものでした。

カントリーやファンクっぽいロックといった感じで、当時はざっくりミクスチャーというカテゴライズを自分なりにしてみたけれど、特徴的なのはシャノン・フーンの歌声でした。どこか中性的な歌声は、いわゆるグランジ勢のバンドにはあまりいなかったタイプの声質だったのではないでしょうか。今にして思えば、ロバート・プラントとか70年代のロックシンガーなんかはこういった感じの声質が当たり前だったかもしれませんが。なにしろ当時の僕はまだそんなに音楽をたくさん聴いていなかったので、シャノンの声がすごく珍しいものに聴こえました。

そしてちょっと苦手な声でした。

カート・コバーンやエディ・ヴェダー、レイン・ステイリーにクリス・コーネルといった男臭さを感じさせる声が好みでだったので、シャノン・フーンの声はいまいち好きになれませんでした。

ダイナソーJrのときでもそうですが、当時の僕は曲の良し悪しをほぼヴォーカルパートで決めつけていたのかもしれません。言っても、ヴォーカルが一番わかりやすいですし、最もよく聴こえるパートってやっぱりヴォーカルですよね。

でも音楽って聴き続けるといろんな音に気付きますよね。ギターの音でも、ヴォーカルのメロディとは違うフレーズを弾いているのがわかりますし、なんといってもベースの音が聴こえるようになりますよね。音楽に対して全くの無知のときには、ベースの音なんて聴き取れなかったですから。

そしてブラインドメロンは楽器隊の演奏がメチャクチャ格好いい!

当時、ブラインドメロンはシャノン・フーンのカリスマ性が魅力的なバンドという紹介をされており(たしかに特徴のある歌声をしています)、ほかのバンドメンバーにはあまりスポットが当たっていませんでした。でもこのバンドの素晴らしいところは、ヴォーカルもさることながら、ギター、ベース、ドラムといったシャノン以外のメンバーの演奏がいいんですよね。ヘッドホンをつけて音量を大きめ、というか爆音で聴いてみるのがオススメなんですけど、かなりギターがメロディアスで、なんならヴォーカルよりもメロディアスですよ。ベースもせわしなく動いてる様がわかりますし、ドラムも細かくハイハットやスネアを叩いてグルーブ感ハンパないです。

1曲目の「Soak The Skin」と2曲目「Tones Of Home」なんかは、まさにこのバンドの音楽スタイルを端的に表す楽曲だと思います。ベースとドラムが生み出すグルーブに、2本のギターによる切れ味鋭いカッティングとメロディックなフレーズが合わさって、間奏や終盤なんてまるでジャムセッションしているかのようで、ヴォーカルがなくても聴きごたえがあります。

もちろんシャノン・フーンのヴォーカルが格好いいのが前提ですけど、彼のヴォーカルの才能が突出している訳でなく、メンバー全員が優れた技術とセンスの持ち主なんですよね。

「I Wonder」はゆったりとしたギターのアルペジオから始まる曲。シャノンも前2曲のように軽快に歌うのではなく、憂いを含む感情をメロディーに乗せるようにじっくりと歌い上げます。

「Paper Scratcher」と「Dear Ol’dad」はギターが格好いい曲です。ツインギターの魅力と言いますか、どっちのギターがリードなのかリズムなのかよく分からないくらい役割が目まぐるしく変わります。このバンドにはクリストファー・ソーンとロジャース・スティーブンスという二人のギタリストがいますが、どちらがどちらのギターを担当しているのか僕は知らないんですけど、誰かご存じですかね?

「Change」と「No Rain」はしっとりと聴かせる曲です。特に「No Rain」は彼らの代表曲というべき大ヒットシングルでした。今思うとこの曲ってなんであんなに売れたんですかね。すごくキャッチーなメロディというわけでもないと思うんですけどね。「Tones Of Home」の方が売れそうな雰囲気ですけど。ただ僕は彼らの曲はもっとファンキーでグルーブのあるものが好きです。

そこへ次曲「Deserted」は完全なタテノリ系で、ギターのカッティングがメチャクチャ格好いいです。ベースとドラムもノリノリです。間奏でちょっと物悲しいギターフレーズが出てくるのですが、そのへんなんかは同じミクスチャーロックの大人気バンド、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのジョン・フルシャンテを感じさせるような、哀愁のある枯れたギターです。そして後半のまるでジャムセッションみたいな展開がしびれます。このアルバムの佳境と言っていいんじゃないですかね。それこそガンズの「November Rain」のような。

次の「Sleepyhouse」はクールダウンの役目といいますか、おとなしめの曲です。

「Holyman」もゆったりとしたテンポの曲ですが、後ろで小さく聴こえるパーカッションの音が小気味いいです。聴いていると自然とリズムをとってしまう自分がいますね。

ハードロック風なリフが珍しい「Seed To A Tree」は個人的にはもう少しメリハリがついてる方が好きな感じですかね。この曲をアルバムで一番好きと言う人はいないと思いますが。

最後から2曲目になる「Drive」はいかにもアルバム終盤に収録されている曲といった感じのスローで落ち着いた曲です。楽しかった遠足の終わりというか、あとは帰るだけで何も起こらないよといった終息の歌とでも言いましょうか。

最終楽曲「Time」はこれぞブラインドメロンといった感じの、ギター、ベース、ドラムが絡み合う実にグルーヴィな曲ですが、非常にベースが格好いい曲なんですよ。最後の最後にベースのブラッド・スミスに見せ場が与えられている気がします。とは言え、そもそもこのバンドはリズム隊の演奏が実にしっかりしていて、だからヴォーカルもギターも好き勝手やれるのかなという気がします。やっぱりベースとドラムはバンドサウンドにおける縁の下の力持ちですね。

前述した次のアルバム『Soup』は、今作よりもオルタナ色が強めの作風で、やはりブラインドメロンの音楽のイメージはこのデビューアルバムの方が強いんじゃないですかね。70年代ロックの焼き直しといったことも言われたようですが、グランジ全盛期の90年代前半にあそこまでヒットしたわけですから、やはりそこには彼らなりのオリジナリティがあったと思います。

シャノン・フーンが亡くなってからも活動している(いた?)らしいですね。僕はその後の作品は聴いていないのですが、やっぱり聴こうとは思わないですね。やはりオリジナルを超えられないんじゃないかなと。

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