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音楽紹介

最高のドラマーが最高のヴォーカリスト/ギタリストに変わった FOO FIGHTERS『Foo Fighters』

1994年。カート・コバーンの自殺によって、僕が最も大好きなバンド、ニルヴァーナは活動を終えてしまいます。ヴォーカリストでありギタリスト、さらにはほとんど全ての楽曲を作曲してきた彼がいなくなってしまった以上、それは仕方のないことでした。

フー・ファイターズはニルヴァーナの元ドラマー、デイブ・グロール(Vo&Gt)によって始まったバンドです。結成から20年以上経った現在でも精力的な活動を続けているだけでなく、グラミー賞を何度も受賞しており、名実ともに世界トップクラスのロックバンドと言えます。

彼らの代表曲は数多くあります。それこそグラミー受賞の「All My Life」(2003年 最優秀ハード・ロック・パフォーマンス賞)、「The Pretender」(2008年 最優秀ハード・ロック・パフォーマンス賞)、「Walk」(2012年 最優秀ロック・パフォーマンス賞&最優秀ロック・ソング賞)はもちろんのこと、個人的にはバンドでコピーもした「Best Of You」や、初期の代表曲「Everlong」も必聴です。どの曲もデイブの男臭いヴォーカルとシャウトが、これぞフー・ファイターズ節という熱いロック魂を感じさせてくれます。

ほぼソロ作品のデビューアルバム

しかし、今回紹介する彼らのデビュー作『Foo Fighters』にはそれらの有名曲は収録されていません。今ではあまりライブで披露されなくなった曲も多いのですが、僕はフー・ファイターズのアルバムの中で今作が一番のお気に入りです。爆発的な人気を得る前の作品ですが(とは言えUSだけでも100万枚以上売れています)、良い曲も多いですし、むしろ他のアルバムよりも良作揃いだと思っています。

そもそもこのアルバムは、デイブが一人でスタジオに入り、全ての楽器パートを自分一人で演奏したものです(アフガン・ウィッグスというバンドの中心人物グレッグ・デュリがギターで一部参加)。その頃にはまだ他のバンドメンバーが決まっておらず、その時点ではデモとしての録音だったようです。レコード会社とのアルバム契約が決まった際に、改めてレコーディングし直されるという話だっものが、デイブ自身が最初のデモ段階の出来栄を大変気に入ったらしく、録り直さずに発売となったものです。だからなのかはわかりませんが、2枚目以降のアルバムと比べると音があまり良くないんですよね。

でも、それが良いんです!

これ以降のフー・ファイターズの音はもっときれいというか、ヴォーカルも含めて全てのパートの音の輪郭がはっきりしていて、すごく聴きやすいんですよね。それらに比べると『Foo Fighters』はもっとザラザラしているというか、ぐしゃっとしたイメージです。

でもその音がいわゆるグランジサウンドっぽくて、ニルヴァーナ好きとしては魅力的なんですよね。他のアルバムの楽曲も好きなんですけど、アルバム全体の質感が個人的には好みですね。

発売当時、待ちに待ったこのアルバムをCDコンポに入れて、再生ボタンを押して流れた1曲目が「This Is A Call」でした。ニルヴァーナよりもキャッチーでスピード感のあるこの曲を聴いて、「これ本当にデイブ・グロールが作ったのか!?」と興奮しました。よくよく考えてみれば、ニルヴァーナの楽曲はほぼカートが作っていたのですから、デイブが作る曲がニルヴァーナとは違うものであっても不思議はないんですけどね。良い意味で裏切られた気がしましたね。

そのほかにも「I’ii Stick Around」や「Good Grief」や「Wattershed」といったパンキッシュな曲も、陰鬱でヘビーが売りの典型的なグランジバンドの曲とは一線を画すものでした。かといってメロコアほどパンク寄りにならず、ほどよいバランス感覚の新しいオルタナティブ・ロックといった感想を持ちました。あと、デイブはこんなにシャウトできるんだとも思いましたね。

「Alone+Easy Target」、「Oh, George」、「For All The Cows」といったミドルテンポのロックナンバーもおすすめです。演奏だけ聴いてみると、ニルヴァーナっぽい一面はありますが、ヴォーカルメロディーがニルヴァーナのそれと比べるとポジティブな印象を与えます。これはカートとデイブの人間性の違いもあるんでしょうかね?カートはかなりナイーブな人間だったようですが、デイブは様々なアーティストともコラボしたりする”ナイスガイ”ですから。オタクとリア充みたいなもんでしょうか。

そしてニルヴァーナ時代には考えられなかった曲が「Big Me」です。

いや~、ふざけたPVですね~。完全に笑わせにきてますけど、当時の僕にしてみたら衝撃でしたよ。あんなに世の中に対するフラストレーションをぶちまけるような曲を演奏していたデイブが、んなに茶目っ気のある演技をするなんて想像もしていませんでした。しかも曲自体も、ここまでポップなものを作れるとも思っていなかったですね。メントスのCMのパロディですが、今の若い人たちは元ネタってわかるんですかね。このPVを観て懐かしさを覚える人は、きっと同世代ですよね。

いまや世界的な人気バンドになったフー・ファイターズですが、デイブの作曲能力もさることながら、盤石の布陣のメンバーの支えもあってのことでしょう。これだけ長く活動している割には、ほとんどメンバー変更をしていないですから、チームワークも上手くいってるんでしょうね。

前述したように、フー・ファイターズはいまさら説明しなくても超有名なバンドですけど、今ではあまり語られなくなったこのデビュー作を改めて聴いてみてもいいんじゃないでしょうか。

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