メロコア(メロディック・ハードコア)というと、どうしても最近のポップ・パンクのようなバンドをイメージしてしまう。それでも、そういったメロコアバンドの中にも70~80年代のパンクのアティトゥードを持った硬派なバンドはいる。大御所のバッド・レリジョンやNOFXなんかは、メロコアというよりもパンク・バンドと呼ぶ方が個人的にはしっくりくる。結局は、音楽性どうこうよりもバンドの持つ匂いや雰囲気で区別しているのだと思う。
ウィキペディアでは冒頭1行目から「メロコアバンド」と書かれていますが、僕としてはRISE AGAINST(ライズ・アゲインスト)は、純然たるパンク・バンドと呼びたい。
疾走感があり、ヴォーカルもギターもメロディアスな音楽スタイルはこれぞメロコアといったものですが、歌詞の題材は主に政治的・反体制的なもので、そのPVにも強いメッセージが込められているものが多いです。
そんな彼らの最高傑作ともいえるアルバムがメジャー2作目の『The Sufferer And The Witness』!ただメロコアと呼ぶだけではもったいない、名ロックソングが集まった作品です。
エモーショナル&メロディアスなパンク・アルバム
このアルバムは1曲目の「Chamber The Cartridge」から熱く盛り上がります。ゆったりとしたギターリフと大人しめなドラムロールから始まるイントロですが、ヴォーカルの参加と共にスピード感あふれるパンクナンバーに変貌。ヴォーカルのティム・マクラス(Vo&Gt)のしゃがれた雄叫びが、ポップ・パンクと呼ばれるバンドとは一線を画しますね。
2曲目の「Injection」も、ド直球のメロコアナンバーです。サビのティムの叙情的でありながら熱を帯びたヴォーカルは彼の真骨頂です。イントロとサビ部分のクリス・チェッセ(Gt、2007年脱退)のギターも疾走感があってカッコ良いですねえ~。
「Ready To Fall」のPVはストレートに自然破壊をテーマにしたもので、多くの動物の死骸が映っているのも、彼らがヴィーガン(肉、魚だけでなく、卵や乳製品も摂らない完全菜食主義者)ということと無関係ではないでしょう。
もうひとつ紹介する「Prayer Of The Refugee」のPVも政治的メッセージを含んだものとなっています。ただ、難しい内容どうこうは抜きにして、この曲は彼らの最高傑作のひとつと呼んでも差し支えない名曲です。このアルバム以前にも彼らの曲は知っていましたが、この曲を聴いて、完全に彼らのファンになってしまいました。もうイントロの静の部分と、サビの動の部分の対比が素晴らしいの一言に尽きます。
いやあ~、いつ聴いてもいい曲だあ~。このバンドは愁いを帯びた表現が本当に素晴らしい。エモコアと呼ばれる、ミドルテンポで、ポップとパンクの中間の曲ばっかりやるような(一部の)バンドよりも、よっぽどエモーショナルだ。
「Prayer Of The Refugee」のアウトロからイントロに繋がる「Drones」は、今作の中で最も攻撃性の強い曲。ザクザクとミュートで刻むギターリフは、疾走感に加えて重低音もプラスされるので、曲にヘビーさが生まれています。
サビの “Break Out” のコーラスが個人的にツボな「Behind Closed Doors」も、メロディアスな疾走感がたまらない1曲です。
いやあ、この時代のライズ・アゲインストが一番好きだなあ。ヴォーカルのメロディとギターリフの絡みが最高に合っていたと思っています。クリス・チェッセが抜けてからは、彼らの楽曲から魅力的なギターリフが少なくなってしまったんですよね。
最終曲の「Survive」は決して曲が長いわけではないのですが、何故か大作の雰囲気を感じてしまう曲です。派手さはないのですが、ブランドン・バーンズ(Dr)の要所要所でツボを押さえたドラミングがいい味を出しています。
政治的メッセージの強い曲が多い彼らですが、まあ歌詞の内容なんて全部理解する必要もないので、ただただカッコいいロックを聴くという理由だけで、このバンドは十分に楽しませてくれます。他にも政治や社会の問題を歌うバンドやミュージシャンは山ほどいますけど、純粋にロックを感じさせてくれれば、それ以外のことは個人で考えればいいんじゃあないでしょうか。