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90年代のグラムロック SUEDE『Coming Up』

90年代のUKロックと言えば、ブラー、オアシスを筆頭とするブリットポップが真っ先に挙げられるのではないでしょうか。シーン自体は短命に終わった感がありますが、その後のUKロックバンドには、ブリットポップからの影響を感じさせるものが数多く出現しました。オアシスのようなスタジアムロックを鳴らすバンドもいれば、ブラーのひねくれたポップセンスを受け継いだようなバンドもいます。やはり90年代以降のUKロックにとって、この二組のバンドの影響力というものは相当大きなものです。

しかし90年代のUKロックバンドにはもう一組無視できない存在があります。

SUEDE(スウェード)です。

デビュー当時から耽美的なイメージを持った彼らは、ドラッグや同性愛、SEXをテーマにした曲を歌い、非常に異質で危険な香りのするバンドでした。その要因は何と言ってもブレット・アンダーソン(Vo)とバーナード・バトラー(Gt)のコンビネーションにありました。グラマラスなブレットのヴォーカルに、こちらも妖艶という表現がしっくりくるバーナードが生み出すギターフレーズ。この二人の才能が合わさったら、そりゃあ耽美でセクシャルなバンドが生まれるよなと頷ける話です。

ところが2ndアルバムが完成する前に、バーナードがバンドを脱退します。

起死回生の3rdアルバム、新生スウェード誕生

スウェードの曲は全てブレットとバナードの共作なので、大げさでなくバンドは存続の危機を迎えます。その後、バンドには若干17歳のギタリスト、リチャード・オークス(Gt)が加入します。正直言って、当初は彼の加入は話題性を重視したものなんじゃないかと疑っていました。なにしろバーナードのような、演奏面でも作曲面でも素晴らしいギタリストの後釜なんて、そう簡単に務まるものではないでしょう。ブレットは自分一人で作曲をして、代わりのギタリストはお飾りにする気ではと訝しみました。

そして発表された彼らの3rdアルバムが『Coming Up』です。

1曲目の「Trash」は新生スウェード誕生を告げるのに相応しいトラックです。曲調は今までの彼らのものからすると、かなり明るくポップな感じとなりました。特にギターの音は刺々しくエッジの利いたものから、マイルドな印象です。ソングライティングの半分を担っていたバーナードがいなくなったので、変化は生まれて当然なのですが、良い方向に変化できたのじゃあないでしょうか。この曲を含めて、アルバムの半分以上の曲はブレットとリチャードの共作になっています。彼の加入は意味があるものだったんですね。すごいぞ、リチャード!

2曲目の「Filmstar」は今までのスウェードのようなダークで耽美的な曲です。ただしバーナード在籍時の楽曲よりもギターの音はシェイプアップされており(良い意味でいえば、くどくなくなった)、ファンによってはバーナードのギターの方が好きと言う人も多いでしょう。でも僕はこれはこれでバンドアンサンブルが良くなっていると思っています。

「SHE」や「Starcrazy」といった曲もスウェードらしいダークなイメージの曲です。特に「Starcrazy」はイントロから全面的にリチャードのギターがフィーチャーされているギターロック然とした曲。個人的には今作の中でもかなりのお気に入りです。

もちろんギターばかりでなく、フロントマンのブレットのヴォーカルが聴きごたえのある楽曲にも素晴らしいものがありますよ。

「Lazy」、「By The Sea」、「The Chemistry Between Us」はこれぞ “スウェード” といったブレットのセクシーな色気たっぷりのヴォーカルが堪能できます。

「Trash」と同じくこのアルバムの注目作はやはり「Beautiful Ones」ですかね。この曲も彼らのイメージをがらりと変えた、新たな方向性を打ち出した曲だと思います。エッジの利いたギターから始まり、他の楽器も合わさってくるのですが、非常にポップで、ブレットのヴォーカルも非常にキャッチーなメロディです。歌詞は相変わらず退廃的ですが、よくこの内容をこんなキャッチーに歌い上げるもんです。

アルバムの最後は「Saturday Night」というバラードで締めるのですが、日本盤にはその後に「Young Men」というボーナストラックが収録されています。この「Young Men」がブレットのヴォーカルとリチャードのギターが見事に絡み合って、なかなかいい曲なんです。ボーナストラックやB面など、本編に収録されなかった曲の中にもいい曲ありますよね。ああいった曲がアルバムから外れるのって何なんでしょうか?アーティストの意向なんでしょうけど、わからないですね。

初期からのスウェードファンからすると、ギターはやはりバーナード・バトラーでないと!という意見はあるでしょうが、僕はこのアルバムは好きですね。初期2作とは確かにテイストが違いますが、このポップさは意外とハマります。

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