おんどくライフ
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音楽紹介

哀愁ポップロック SUPERCHUNK『Here’s Where The Strings Come In』

1990年代前半からロックを聴き始めた僕は、当時色々なバンドやミュージシャンを知りたくて仕方なかったものですが、いかんせん田舎に住んでいたので、とにかく入ってくる情報が少ない。本屋にも音楽雑誌の入荷はほとんどなく、なかなか自分が知らない音楽の知識を増やす機会がありませんでした。町のレンタルビデオ兼CDショップにもロックなんてほとんど置いてなくて、洋楽ロックを聴く人間も周囲にいなかったので情報を共有する相手もおらず、当然CDの貸し借りなんかもほとんどしたことがないという環境でした。

所有するCDのライナノーツには様々なバンドの名前が挙がっており、そのCDのアーティストとの関連について書かれてる記事を読むと、どんなバンドでどんな音を出しているのかが非常に気になったものです。ところが現在みたいにインターネットが一般的なものでなかったし、先に書いた理由でなかなか新しいミュージシャンの音楽に触れる機会がありませんでした。

その後大学進学のために都会に出てきてから、僕の音楽知識は急速に増えることとなります。それは音楽を共通の趣味とする友人ができたし、雑誌を読みふけっていろんなバンドを知ることができたから。それでもアメリカのインディーロックバンドの情報を扱う媒体は少なかったので、まだまだ名前しか知らないようなバンドもたくさんありました。

そんなある日、音楽仲間の一人が一枚のCDを聴かせてくれました。

アルバムタイトルは『Here’s Where The Strings Come In』。USインディーロック界の重鎮SUPERCHUNK(スーパーチャンク)の5枚目のアルバムです。

ポップ、パンク、エモ。若者を熱狂させる全てが詰まったアルバム

その友人とはオルタナ系やメロコアなんかの音楽趣味が合い、僕よりも沢山のCDを持っていたので、色々とCDを貸してもらっていました。ジャンルとしては僕が今まで馴染みがなかったパンクやハードコア、デスメタル系のバンドなんかも彼を通じて知るようになりました。結構、激しめのバンドを好む奴なんですが、たまにこういったオルタナバンドも勧めてきたんですよね。

スーパーチャンクは、メンバーのマック・マコーン(Vo&Gt)とローラ・バランス(Ba)がマージ・レコードというインディーレーバルを運営しており、自分たちの音源もそこからリリースしています。バンド結成当時から運営しているらしく、非常にDIY精神に優れた人たちです。マージ・レコードからはグラミー賞受賞をしたアーケイド・ファイアを輩出しており、インディレーベルとしては十分成功していると言えますね。

『Here’s Where The Strings Come In』には彼らの代表曲のひとつである「Hyper Enough」が1曲目に収録されています。アルバムを再生してすぐにこの曲が流れるんですから、つかみはバッチリです。

スーパーチャンクらしさ全開の名曲です!独特のポップなメロディはどこか哀愁を含んでおり、ただ単にギターポップとは呼べないセンスがありますよね。

彼らの魅力のひとつとして、どこか寂し気な、哀愁漂うメロディが挙げられます。「Hyper Enough」のようなアップテンポの曲もいいんですが、テンポを落としたゆったりめの曲にも良曲が多いんです。また彼らの曲はギターもカッコよくて、ソロパートはもちろんですが、コーラスのバックで流れるギターフレーズもパワーコード一辺倒なものばかりでなく、非常に叙情的な雰囲気を作り出してくれます。「Silver Leaf And Snowy Tears」や「Iron On」といった曲がそんな感じですね。

叙情的といえば「Animated Airplanes Over Germany」は、エモーショナルなメロディが心に突き刺さる曲です。スーパーチャンク歴代の曲の中でも、かなりエモに近い曲調じゃあないですかね。青春の切なさというか、夕暮れ時の情景が目に浮かぶような曲です。

前半は元気いっぱいといった風の、テンションが上がるアップテンポな曲ですが、後半から曲調が変化し物悲しい雰囲気となります。終わり方が切ないんですよね~。

今作『Here’s Where The Strings Come In』を語る上で外せない曲といえば、やはり「Detroit Has A Skyline」に他なりません。「Hyper Enough」と並ぶ、スーパーチャンクの代表曲です。ライブでもよく演奏されるナンバーで、彼ら特有の叙情的なメロディはもちろんですが、何といってもライブ映えするノリの良さとキャッチーさが人気の秘訣でしょう。また、ライブだとイメージの割には意外と手数が多いジョン・ウースター(Dr)のドラミングのカッコよさが伝わってきます。

彼らのライブを一度だけ観たことがありますが、もう20年近く昔のことなのであまり覚えていないのが残念です。ナンバーガールとの対バンでしたね。観客の半分以上はナンバーガール目当てだったんじゃないですかね。僕にスーパーチャンクを教えてくれた友人とふたりで観に行きましたが、スーパーチャンクの演奏の時は僕らが一番盛り上がっていた気がします。まあ、自意識過剰ですけど。

いまだにアルバムをリリースしてレーベルも運営している、非常に息の長いバンドです。まだまだ新作を期待しているので、長く活動を続けてほしいですね。

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