「ストーナー・ロック」というジャンルがあることをこのアルバムで知りました。”ストーナー”とはスラングで麻薬使用者という意味があるらしく、今回紹介するQUEENS OF THE STONE AGE(クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ、以下QOTSA)も、その括りでデビューしました。いわゆるストーナー・ロックのトリップするようなドロドロ感はあまりないですね。低音リフの繰り返しが目立つのはストーナー・ロックの特徴ですが、今作『Rated R』はもっと曲に起伏があり、聴きやすい一枚です。
彼らのアルバムで有名なのは、元ニルヴァーナでフー・ファイターズのフロントマンのデイブ・グロールがドラムで参加した『Song For The Deaf』でしょうか。『Rated R』と比べるともっとサウンド面で太くなったというか、王道ロックらしさが強まった感じです。ただ僕としては『Rated R』のなんだか頼りない音と、ひねくれたポップな要素が垣間見える瞬間が好きですね。
QOTSA史上、最もポップネスに溢れた一枚
とにかく1曲目の「Feel Good Hit Of The Summer」が最高です。初めて聴いたときはぶっ飛びましたね。こんな単純なのに、メチャメチャ格好いい!と。シンプルなリフと、ほぼ一本調子なヴォーカルメロディ。だけど途中から何人ものコーラスが加わり、ピアノも鳴り出して、盛り上がっていきます。3分に満たない長さですが、ストレートなロックでありながら、少しだけポップな味付けが施されたジョシュ・オムのセンスが光る曲です。
その後に続く「The Lost Art Of Keeping A Secret」はストーナー・ロックが持つトリップ感のあるQOTSAらしい曲です。ジョシュの気だるそうなヴォーカルと曲調が完璧にマッチしているので、激しい中にもなんだか眠気を誘う不思議な印象です。
「Leg Of Lamb」は出だしから人をおちょくったような、ヘンテコなリフの繰り返しによる曲です。終盤にはこれまた奇妙なメロディの短いギターソロが入りますが、大きく盛り上がることなく終わります。
どちらの曲も「Feel Good Hit Of The Summer」とは曲調やテンポ、テンションも違いますが、根底にある中毒性は同じです。何故かクセになるんですよね。
QOTSAのもう一人のメンバーであるニック・オリヴェリ(Vo&Ba)が歌う曲は、ジョシュとは違い、ハイテンションで絶叫しているものが多いです。「Quick And To The Pointless」、「Tension Head」がそれですね。ただひとつだけ「Auto Pilot」だけはゆったりとした曲で、同一人物が歌っているとは思えないほどです。のちにニックはバンドを脱退しますが、彼の歌はバンドの中でもいいアクセントになっていたので残念です。
初期のQOTSAは基本的にジョシュとニックふたりのプロジェクトで、アルバムごとにゲストミュージシャンが参加していました。その中でもスクリーミング・トゥリーズのヴォーカリスト、マーク・ラネガンが毎回リードヴォーカルをとる曲が必ず1曲は収録されていました。ジョシュがQOTSAの前に所属していたKYUSS(カイアス)が解散した後に、スクリーミング・トゥリーズのツアーにサポートギタリストとして帯同。その頃の縁もあってのことでしょうね。
そのマーク・ラネガンが歌う「In The Fade」が素晴らしい。マークの低くしゃがれた歌声に、牧歌的なベースとギターが絡みます。途中でノイズ混じりのギターサウンドになるのですが、ハードなイメージではなくどこかしらノスタルジックな感触を覚えます。
前述したように次回作からQOTSAはかなり骨太ロックサウンドの作風に変わっていきます。個人的には、今作のような芯がしっかりとしていない、ふぬけた歪みのギターサウンドがジョシュの声に合っていると思うのですが、その後世界的に売れたことを考えるとそちらの方が一般には受ける音のようです。
最近のライブではあまり今作の曲は演らないようですが、こういったいかにもオルタナといった曲をもっと聞く機会が欲しいですね。